当たり前だが、IPOの初値が上がるのは初値を買う投資家が存在するためである。IPOの「初値を買う」という投資行動を取ることができるのは、ほとんど個人投資家だけと考えて問題ない。幹事に入っている証券会社はもちろん、幹事に加わっていない証券会社のディーリング部でも「初値の売買に関与してはダメ」という規定があるそうだ。 「初値を買う」という特殊な行動を取る個人投資家はかなりの猛者(玄人)である。スイス中銀が無制限介入の終了を突然発表したとき、ユーロ・スイスフランのポジションを持っていた人と同じくらいの猛者と考えていい。多くの投資家はFX(外国為替証拠金取引)でスイスフランを売買したこともないはずだ。 その限られた猛者たちが初値を買う理由は、「儲かりそうだから買ってみる」というシンプルなものであり、そこにビジネスモデルや業績の確認すら必要としない投資家が多いと聞く。人気のある東証マザーズ上場のIPO銘柄ともなれば、瞬間的に尋常ではないほどハネ上がる流動性とボラティリティを理由に「常に初値買いへ参加する」くらいの猛者筋が多いとみられる。 猛者筋の資金は「最低でも6億円ある」と考えられる。これは昨年、マザーズに上場したIPO43社を対象にした検証結果だ。この最低6億円の資金を「初値買い資金」と呼ぶ。これは、「全株一致で初値がついた瞬間の出来高(株)×初値(円)」で計算できる。 これこそ、「初値を買う人のエネルギー量」を示す数字だ。昨年上場の43社の平均額は24.8億円。最も少なかったホットランド(3196)で6.5億円、最も多かったサイバーダイン(7779)で140.2億円だった。 IPOの初値は、公開規模(公開株数×公開価格)が6億円以下であれば、理屈のうえでは仮にIPO株に当選した人全員が初値で売却したとしても公開価格割れしないことになる。昨年、公開規模で最小(2.3億円)だったビーロット(3452)の初値が公開価格の5.2倍になったのがいい例だろう。「初値騰落率が高い時期(IPO人気がありそうに感じる時期)」というのは、たまたま「公開規模の小さい案件が重なって高くなった時期」という可能性もあるのだ。【プレゼント】SBI証券の口座開設&お取引で最大8,000円相当!<会社四季報オンラインからの抜粋>


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