東証１部上場のメニコン社長、会長に事業戦略を聞く

本日上場のメニコンについて書かれていた日経新聞の記事です。

　コンタクトレンズの製造・販売を手掛けるメニコンが25日、東証１部に上場する。日本で初めて角膜コンタクトレンズを開発した田中恭一創業者会長（83）が実質的に1957年に創業。「約30年来の悲願」（田中英成社長）である上場を果たす。上場の経緯や今後の事業戦略を、田中英成社長（55）と現在も精力的に研究に携わる田中恭一会長に聞いた。 ――なぜ今、新規株式公開（ＩＰＯ）なのでしょうか。メニコン・田中英成社長「上場は約30年来の悲願だ。57年の創業以来、多くの人にコンタクトが受け入れられ会社は成長してきた。ただ、成長の過程では親族が立ち上げた会社との取引が多く、透明性を高める必要があった。多くの時間を要したが、経営改革を続けた結果、ようやく上場企業にふさわしい体制が整った。今回は岐阜県各務原の新工場への資金調達という目的もあってＩＰＯに踏み切った」 ――国内のコンタクトレンズの市場環境は。ネット通販での販売も増えています。「国内では少子高齢化によって市場規模が縮小していく。そのなかで、当社の強みである『メルスプラン』をいかしていく。メルスプランは定額で紛失や破損、度数の変更を保証するサービス。医療機器であるコンタクトレンズを安心、安全に使ってもらうものだ。使用者ひとりひとりの満足度を高め、固定客を広げられると考えている」「メルスプランは加入者の使用状況を確認できるうえ、価格競争にも巻き込まれにくい。業績のぶれが少ないという利点がある」 ――海外の事業展開は。「シンガポールでメルスプランに近いサービスを試験的に導入した。商慣習や法制度が日本とは異なり、独自の展開も必要だが、普及させていくつもりだ。2015年３月期における海外売上高は約79億円と全体の13％程度だ。そのほとんどがハードコンタクトレンズの販売だ。今後は使い捨てのソフトコンタクトレンズの展開を強化していく」 ――コンタクトレンズ以外の事業展開は。「第二、第三の事業の柱を育てていく方針だ。メニコンをローマ字表記にするとなかには『Ｅ』『ＣＯ』の文字がある。健康と切り離せない環境事業を展開していく。例えば、発酵促進技術。14年にはスターバックスコーヒージャパン向けにコーヒー抽出後の豆かすを再利用して牛の飼料化として活用する技術監修をした。このほかにも、女性が妊娠しやすい体作りをサポートするサプリメントを販売するライフサイエンス事業など、これまでの研究開発で積み重ねてきた成果が着々と実りつつある」 ――市場では株主配分への関心が高い。「株主には業績拡大で満足度を高めてもらい、長期間に渡って当社のサポーターとして応援し続けたい企業だと思われることを目指したい。応援してくれる株主の方々にはきちんと利益還元していきたい」 ――創業60年あまりで上場します。ここまでの道のりは。 ■田中恭一創業者会長「ようやくここまでたどり着いたという思いだ。社員株主も多く、すでに退社した社員も気にかけていた人が多い。（具体的に上場を目指してから）約30年という長い道のりだったが、ようやく上場にこぎ着けた」 ――日本で初めての角膜コンタクトレンズを開発したきっかけは。「名古屋市中区にある眼鏡屋の『玉水屋』で働いていた時だ。当時は戦後で米軍関係者の顧客が多かった。ある米軍将校夫人が『（白目まで覆う）コンタクトを持っている』と言った。米国で作られたものだったようだが、『見せてください』というと断られてしまった。それなら自分で作ろうと決めてがむしゃらに研究を重ねた。ガラスで作った試作品を自分の目に入れ、どんな時にずれるのか、脱落しやすいのか、様々な症状を自分で体験して改良を繰り返した結果できあがった」 ――いまは会長としてどう会社に関わっているのですか。「経営は退いたが、研究員とのミーティングや試作品を厳しくチェックしている。今まで開発したコンタクトレンズは全て私の目に入れてきた。今後も続けていく。自分自身で試し、より良いものを作りたい気持ちだ。研究に魅力を感じてやまない」 ――メニコンの目指すところは。「当社の研究員には人のまねをするなと口を酸っぱくして言っている。創造と独創とチャレンジが大事だ。どうやったら課題を解決できるか、慌てずにじっくりと日々積み重ねていく。おかげでコンタクトレンズの開発を通じて様々な技術を培ってきた。コンタクトレンズ以外にも事業は広がりつつある。今後２～３年で新たな商品ができてくるはずだ」
〔日経ＱＵＩＣＫニュース〕